「暁霞 ‒ AKIGASUMI ‒」:香りの老舗と銘醸蔵が織りなす、静謐なる余韻の物語

 

手法と原材料:技術と感性の重なり

この酒の特筆すべき点は、その香りの構成と原料選定のユニークさにある。普通、日本酒は一種類の酵母、一種類の酒米で仕込まれることが多いが、暁霞では以下の要素を掛け合わせる斬新なアプローチを採用している。 

 

要素 内容
酵母 F7-01、1801、煌(きらめき)酵母の三種。発酵速度・香りの質がそれぞれ異なるこれらを同じタンクで同時に使用し、低温醸造でゆっくり香味を調和させている。
酒米 麹米に「福乃香」、掛米に「五百万石」(いずれも福島県産)。福乃香による柔らかな旨味と、五百万石がもたらす切れの良さが組み合わさっている。 
アルコール度数・分類 純米吟醸酒、アルコール度数は約16度。火入れ処理を施したボトルタイプ。

香りの構造:三段階のノートの移ろい

暁霞は、まるで香水のように「トップノート → ミドルノート → ラストノート」を意識して設計された酒である。グラスを傾けた瞬間から、時間と温度の変化とともに香りが顔を変えていく体験を提供する。特に以下のようなニュアンスが感じられるとされている。 

  • メロン、青リンゴを想わせるフルーティーで爽やかなグリーンな香り

  • バナナのような甘い香り(酢酸イソアミル系)

  • 口に含んだ後の戻り香、余韻に残る透明感と切れのある苦味(五百万石由来)、それを支える福乃香のほどよい甘みと旨味 

 

味わいとマリアージュ:多様性が光る食中酒

『暁霞』はその香りだけでなく、料理との相性も考え抜かれている。以下のようなペアリングでその魅力が一層引き立つだろう。

  • 刺身・鮮魚:白身魚、サーモンなどの軽い風味の魚。冷やした状態で、香りのトップノートを楽しみながら。

  • 揚げ物・天ぷら:衣の香ばしさが、酒の甘みと苦みの対比で深みを加える。

  • 焼き魚・肉:特に脂ののった魚や鶏・豚の軽くグリルしたものに、切れの良さが追い風となる。

  • 野菜料理:茹でた緑野菜やシャキシャキとした食感のもの。香りと旨味が軽快に溶け込む。

  • 温度変化を楽しむ飲み方:冷酒〜常温〜ぬる燗と温度を変えて香りの層の変化を体感すると、一杯の中に時間の流れが宿る。 

 

名前とデザインに込められた物語

“暁霞(あきがすみ)”という名称には、春の夜明けが山々を霞(かすみ)で包み、光が徐々に差し込む情景=彩雲(さいうん)が重なり合う儚く美しい光景というイメージが投影されている。ライトと暗闇、静寂と期待の間に生じるその“間(ま)”こそが、この酒の香りと余韻が重なり合いながら移ろう様子と重なっている。 

ボトルのデザインにも、その美学が反映されており、ラベルの余白・色調・書体には透明感と端正さを追求。香りと味の複雑さを裏切らない静かな気品がある。 

 

発売・価格・入手・提供情報

  • 火入れボトル(720ml):9月15日(月・祝)11:30より発売。税込価格6,600円。限定300本。    お一人様2本まで。

  • 販売先:銀座らん月オンラインショップ、および銀座らん月/唎き酒処「酒の穴」の店頭にて。

  • 店内提供(生酒タイプ):銀座らん月、酒の穴にて1合1,650円(税込)。限定数量で生酒が先行提供されていた。


香りと記憶に刻まれる一杯

 

 『暁霞 ‒ AKIGASUMI ‒』は、ただ香り高いだけの酒ではない。香りの変化を“聞く”、味わいの重なりを“見る”、時間とともに変わる余韻を“感じる”という総合体験を志している。香りの老舗と酒の銘蔵が、お互いの“匠”を持ち寄って造り上げたこの酒は、香りと味の記憶を重ねたい人、あるいは贈り物としてもその名にふさわしい。限定本数ゆえ、“喝采と共に早くなくなる”ことが予想されるゆえ、酒好きはぜひその発売日と提供店を押さえておきたい。

『羅國 暁霞』:沈香が織りなす、春の朝の幻想

 

香の世界で「羅國」と呼ばれる、清らかで甘美な香りを放つ最高級の沈香。その崇高な香りが、春の暁に現れる、幾重にも重なる彩雲の情景と溶け合い、一本の線香となりました。それが、2025年5月に発売された、日本香堂の新作『羅國 暁霞(らこく あきがすみ)』です。

この香は、単なる香りを超えた、物語を内包しています。

“春の暁に、未来を移す霞。幾重にも重なる彩雲は、希望を翼に変えて舞い上がる鳥のよう”

――この詩的な情景が、香りの概念に深く投影されています。


 

香りの構造:五感を呼び覚ます芸術

 

『羅國 暁霞』は、一筋の煙が立ち上るその瞬間から、香りの芸術を紡ぎ始めます。

トップノート:火をつけた瞬間、まず感じられるのは、主役である沈香の、深く気品のある甘みです。それは、まるで静寂に包まれた暁の空に、一筋の光が差し込むかのような、澄み切った清らかさを感じさせます。

ミドルノート:やがて、乳香(フランキンセンス)の神秘的な香りと、透明感のあるバニラの柔らかな甘みが、沈香の香りと絡み合い、幾層にも重なり合います。この複雑なレイヤーが、空に浮かぶ彩雲のように幻想的な世界を創り出します。

ラストノート:そして、サフラングリーンの爽やかさと、山椒がもたらす清冽な酸味と苦みが、香りに奥行きを与えます。それは、春の朝の空気のように、心地よい余韻となり長く続きます。

この香りは、まるで香水のように三段階に変化しながら、その世界観を完成させます。


 

職人技が宿る、静謐な一本

 

この香りの完成度は、原材料へのこだわりだけでなく、製造工程における徹底した職人技によって支えられています。香の成形に使う糊粉の量を極限まで減らし、香りを損なう要因となる余計な熱を一切加えない製法を採用。粉砕から成形、そして乾燥に至るまで、じっくりと時間をかけて丁寧に作られています。これにより、素材が持つ本来の香りが最大限に引き出され、その透明感と洗練された香りは、いつまでも心に残るでしょう。

**『羅國 暁霞』**は、香を聞くという行為を通じて、一日の始まりに静けさと希望をもたらす、至高の一本です。

  • 価格: 20,900円(税込)

  • 発売日: 2025年5月

  • 内容量: 約30g

  • 燃焼時間: 約30分

  • 販売先: 日本香堂オンラインショップ(https://www.nipponkodo.co.jp/


■宮泉銘醸株式会社について

人気銘柄「冩樂(写楽)」「會津宮泉」などで知られる

福島県会津若松の酒蔵・宮泉銘醸株式会社

1955 年(昭和 30 年)創業。4 代目蔵元杜氏の宮森義弘が蔵に戻って以降、それま

で行ってきた酒造り、製造環境を一から見直し、2007 年に代表銘柄「冩樂」の製造

を開始。近年では弟の宮森大和が「會津宮泉」の造りを担い、二つの銘柄で理想と

する酒造りを追及し続けている。夏季と冬季の寒暖差がある会津盆地に位置する当

蔵は、豊かな水源と酒造りに適した風土の中で、原料処理、蔵の環境づくり、仕込

み、瓶詰め、そして出荷後の商品が飲み手のもとに届くまでのすべてを酒造りと考

え、その工程で手間を惜しまず、一つ一つ丁寧に作業を行う。造る日本酒が理想の

味わいとなるように、日々変わる蔵内の温度・湿度・香りを入念に確認しながら酒質を突き詰め、チーム一体で酒造りに

取り組んでいる。

http://www.miyaizumi.co.jp/

 

■株式会社日本香堂について

お香・フレグランス商品の製造販売を手がけるメーカー。約 450 年の歴史を持つ日

本香堂グループの中核企業として、『香りと旅する』をアイデンティティとし、日本

の香文化の継承・発展に取り組んでいます。事業部門である「銀座らん月」「酒の

穴」は、香りの切り口から日本の食文化の発展に携わっています。

https://www.nipponkodo.co.jp/