Photo by ART FAIR TOKYO photography team
2005年のスタート以来、日本のアートシーンを牽引し続けてきた「アートフェア東京」。記念すべき20回目の開催となった本イベント(2026年3月13日〜15日)を取材すべく、熱気あふれる東京国際フォーラムへと足を運びました。
今年のテーマの根底に流れていたのは、**「コレクションは私的でありながら公共性を担う」**というCEOの力強いメッセージです。ただ作品を鑑賞し、購入するだけでなく、その「個人の行動」がどう社会に接続し、変革をもたらすのか。国内外から集結した141軒のギャラリーが放つ圧倒的なエネルギーの中で、その答えを探すような刺激的な体験となりました。
現代美術から古美術まで。多様性が生み出す「フロンティアの縮図」
会場に一歩足を踏み入れると、宮島達男氏のメインビジュアル作品が象徴するように、圧倒的なクオリティとジャンルレスな空間が広がっていました。現代美術、近代美術、さらには古美術や工芸まで。一部のジャンルに偏ることなく、多様な表現がフラットに共存する会場は、まさに「日本の文化のフロンティアの縮図」です。数々の作品群と対峙する中で、フェア本来の意義である「多様なものの中から自らの眼で選び出す喜び」を強く実感しました。
Photo by ART FAIR TOKYO photography team
映像表現の未来を問い直す新セクション「FILMS」
個人的に非常に興味深かったのが、昨年度から拡張された映像セクション「FILMS」です。「non-syntax」のディレクションによる『Art and Film? 言葉で定義できない映像の未来』というプログラムは、グローバルな表現のメインストリームでありながら、マーケットとしてはまだ未開拓な映像作品に焦点を当てたもの。アートマーケットの中心で、「映像作品をどう経験し、記憶し、未来へ継承するのか」という根源的な問いを投げかけられる、非常にコンセプチュアルで知的な空間でした。
Photo by ART FAIR TOKYO photography team
掌(てのひら)でアートを味わう。視覚を超えた「身体的な対話」
今回のフェアで最も「体験としての豊かさ」を感じたのは、日本陶磁協会による特別展示『EMBODIED - Soil, Fire, Body』と呈茶席です。歴代の日本陶磁協会賞・奨励賞を受賞した錚々たる陶芸家たちの名品が並ぶ中、実際に受賞作家が手がけた茶碗でお抹茶をいただくという贅沢な試み。
美しい作品をただ目で見るだけでなく、土の質感や温もりを掌から感じ取り、味覚とともに飲み込む。この視覚・触覚・味覚を通した「身体的な対話」は、まさにリアルな場でしか得られない至高のアート体験でした。
Photo by ART FAIR TOKYO photography team
伝統と革新のサイクル。盆栽の特別展示が示す「カルチャー・イノベーション」
また、アクセスエリアで目を引いたのが、「Maji Art Project」による盆栽作家・平尾成志氏の特別展示です。地域固有の文化である盆栽を、過去の技術の蓄積と異文化との融合によって生まれる「イノベーションの連続」として捉え直す試みは、アートの枠を越え、人類の文化発展のプロセスそのものを形象化して見せてくれました。
Photo by ART FAIR TOKYO photography team
アート市場を「社会的な影響力の回路」へと昇華させる場所
フェアに合わせて東京ミッドタウン八重洲で開催されたトークイベント「Dialogue: ASK ART, WHY ?」を含め、今年のアートフェア東京は、「アートとは何か」「なぜアートを求めるのか」を多角的に検証する試みに満ちていました。
単なる取引の場づくりに留まらず、アートマーケットを「社会へ向けたオピニオンの発信地」として位置づけようとする本フェアの姿勢。20回目という節目にふさわしい、日本のアートシーンの成熟とこれからの確かな可能性を感じる、充実の3日間でした。





